fhánaと藍井エイルとボーカロイド
fhánaと藍井エイル。
アニメ主題歌をよく歌ってる中で、ぼくが本当に優れているなあと思うアーティストです。
fhana「星屑のインターリュード」 (TVアニメ『天体のメソッド』ED主題歌) MUSIC VIDEO
なんで彼女たちが主題歌に選ばれ、聞いている僕達もぐっとくるのか考えてみました。
登場人物でない人が歌うアニソンのボーカルについて書きます。
テーマ曲にぴったりな歌声とは
結論からいうと、下記の2つのバランスが絶妙であることが選ばれている理由です。
・覚えられる個性やインパクトがある
・物語や登場人物の感情を移入できる
アニソンだろうがなんだろうが、歌の魅力がなければゴミです。歌やアニメが羽ばたいていくには、よい曲とそれを最大限魅力的に表現されている必要があります。
声が魅力的で覚えられるためには、個性やインパクトが必要です。
特徴のない声では、大事な歌を聞き手に覚えてもらえないかもしれません。
歌手で言えば、椎名林檎、平井堅、福山雅治、ミスチル、サザン、などなど、彼らの声は声を聞いただけでだれだかわかります。
その辺のインディーズバンドのボーカルとかは、声だけ聞いてもこの人だ!となる強さがありません。むしろ音楽のヒットに関して言えば、歌のうまさよりも、だれが聞いてもわかる個性のほうが大事だと思います。
アニソンの条件は、曲とアニメもしくは登場人物がリンクすることだと思います。
アーティスト性がアニメそのものとガッツリはまれば攻撃力がでますが、基本はアニメ側が重要であり、アニソンはそれに従属する必要があります。
その場合にアニソンボーカルに求められるのは、ある種の透明感、移入させる力です。
「声は違えど、この歌声をきくとアニメが思い出される」「この歌声がアニメのメッセージもしくは登場人物の声を代弁している」と感じさせることが必要です。
曲を聞くとアニメ全てが脳内をかき回してテンションがあがるような力が必要です。
ここで個別に2つのアーティストをほめます。
・fhána
彼女の声は、ものすごく強い特徴があるわけではないのに、歌い方のクセや声の出し方なのか、声を聞くとだれだかわかる力があります。
特に高域にちょっとだけ棘というかエッジが効いていつつ、中域にやわらかさがあり、ぱっと聞いてかわいいかんじもします。
歌の表現も、豊かでありつつも、押し付けるような歌い方をしません。平易に言うと「私を見て!私の声を聞いて!」っていうかんじがしません。
この声や歌い方の特徴から、登場人物のかわいらしさ、いとおしさを含みながら、切実さ、強さなどいろんな感情を読み取る余地がでています。
彼女はぱっときいて強い声、ロックボーカルにぴったりな歌唱です。
その叫ぶような声に、強さだけではない、切なさなどのいろんな感情がこもっているようにも聴こえます。
こうした強いボーカルは多くて、上手い人もいくらでもいますが、強くうたっているのに真逆の感情も聞こえてくるような声が彼女の個性になっており、声そのものもおぼえられるだけの個性があります。
このいろんな感情を受け入れる声が、登場人物そのものだけでなく、物語の進行やドラマチックさも代表しているような度量を生み出しています。
あえていうなら、ふたりともいろんな感情がこもったドラマチックな声になっているため、日常系のアニメとかにははまりづらいかもしれません。
日常系は登場人物が歌うことも多いので、オファー自体もされないことが多いかもしれません。
ここまでが、アニソン代表アーティスト2組についての、なぜ選ばれ続けるかのぼくの考えです。
アニメの中の歌 劇伴ボーカル曲
ちょっと考えをすすめて、「物語や登場人物の感情を移入できる」だけをつきつめるとどうなるか?を考えてみます。
究極的には、特長のない声が正解になります。たとえば血界戦線で使われてたボーカル曲とか、歌が上手いジャズ・ボーカルなら大体成り立ちます。
澤野さんが使うボーカル曲も、「なんか聞いたことある感じの洋楽ボーカル」みたいな、なんていうか強い個性はありません。だからこそ音楽や、歌モノが入った高揚感だけを出して、物語を邪魔せずに劇伴としても使えるわけです。
この辺はテーマ曲なのか、劇伴なのかの違いもありますが。劇伴だとさきほどの個性より透明感のほうが重要になるわけです。声の個性とか邪魔なので。
次の可能性 ボーカロイド
fhánaや藍井エイルは、アニメテーマボーカルとしてひとつの正解です。
じゃあ今後も同じようなちょうどいい声の人たちがアニソンを歌い続けていくのかというと、今後はボーカロイドがアニソンテーマを歌う日がくるのではと思っています。
初音ミクも巡音ルカもIAも、電子的であることも含めてパッときいて分かる個性があります。(ミク>ルカ>IA の順番で個性があるような気がします。)
しかし今はボーカロイドのサウンドそのものが新鮮すぎて、物語よりそっちに耳がもってかれしまうのが現在の状況です。ただこれも時がすぎれば、対して珍しくないものになると思われます。
そうなると、個性と透明感のバランスのとれたボーカロイドがアニメテーマを歌う日がきっときます。
次はボーカロイド、という根拠のひとつは、カゲプロ(カゲロウプロジェクト)です。
なんでカゲプロがあんなに流行ったのか、もちろん物語や曲の良さにもありますが、ボーカロイドであることは必須項目だったと思います。
さらに、人造エネミー以外はIAという個性を減らしたボーカロイドを使っているのも、じんさんの狙いが見えてきます。
物語の歌い手を、フラットな声を使うことで、物語や登場人物の感情、さらに聞き手の感情を受け入れる広さをもたせることに成功しています。
ボーカロイドは物語と親和性が高いんです。
ということで、今後どんなアニソンがきけるか楽しみですね!
ではまた!